LongView NO.179




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久しぶりに自費出版の話題


自費出版文化賞の最終審査も終わり、ひと安心というところです。この自費出版文化賞の10周年を記念した書籍『ひとびとの声が聞こえる─自費出版文化賞10年のあゆみ』(発行は揺籃社=写真)が来月に発売になります。この中で、ページはそう多くありませんが、これまでの自費出版文化賞の累計総応募データ約1万点をもとにした自費出版書籍およびその著者の傾向や動向調査を発表しています。 この自費出版文化賞の開催により、日本の自費出版文化のレベルの高さが広く知られるようになりましたが、この集計結果によって、さらに、自費出版の応募者や内容・テーマが地域や世代を越えた多様さと裾野の広さをもっていることを示せたのではないかと考えています。その一部を紹介します。

■応募著者の年齢 総平均は61.8歳、男性が63.7歳、女性が58.3歳。

50歳以上が全体の70%、70歳以上が35.5%を占め、60歳と70歳がピーク
 自費出版の著者の年齢というのは興味のあるテーマですが、自費出版文化賞の応募種類に記入された著者の生年月日と応募著書の発行年月日をもとにして平均年齢を調査してみました。その結果、書籍発行時点での総平均年齢は61.8歳、一方、文化賞応募時点での総平均年齢は62.9歳になりました。部門別の平均年齢も出して見ましたが、

  1. 地域文化 64歳
  2. 個人史  65歳
  3. 文芸 60歳
  4. 研究評論 62歳
  5. グラフィック 56歳

■世代別の区分

60歳代後半を中心にした前後10年がピーク

応募者を5歳単位に分けて年代別に分類してみました。それによると、50歳代が合計で17.9%、60歳代が合計で29.5%なのに対して、70歳代は25.7%です。これでみると、単純な総平均は61.8歳なのですが、実際の応募者数では70歳代以上のほうが多いことがわかります。80歳以上を含めると、35%以上で、完全に全体の3分の1以上を占めているのです。累積にすると以下のようになります。いわゆる定年後の60歳以上の世代が圧倒的に多いという事実があります。こうした世代にとっては、当自費出版文化賞への応募が一種の社会参加のようにとらえられているためではないでしょうか。

  1. 55歳以上で全体の75%
  2. 65歳以上で全体の50%
  3. 70歳以上で全体の35%



この自費出版文化賞の世代別構成を日本の全人口の世代別構成と比較すると、自費出版というものの特色がより鮮明になります。日本の世代別人構成は、国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集(2005年版)によっています。日本の人口構成は、50歳代後半のいわゆる団塊の世代を含む年齢層をピークにして上と下にゆくにつれ減少しています。例外も団塊ジュニアと呼ばれる世代になります。これに対して、自費出版の年齢構成は、表1-1の年齢別構成でもお分かりのように、60歳代後半をピークにしてその前後で、上が15歳、下が10歳前後が巨大な塊を作っています。まるで日本の高齢化を先取りしたような感じの極端な構成です。ここから、今後の自費出版のマーケットがどのようになっていくかのシミュレーションが可能です。日本全体の人口構成で中核となる20歳〜60歳代の人口数は今後10-15年ほどは大きな変化がないと考えられることから、10年後は60歳代後半がピーク、15年後は70歳代前半がピークになる形で推移すると思われます。
(略)
それぞれ23%、61%という大変な伸び率になっています。65-74歳が23%増えるということは、単純にいうと、現時点での自費出版年齢のピークである2つの年代の人口が23%増えるということになります。年金や医療などの高齢化社会で起こるさまざまな問題は別にしても、この結果で、本当に自費出版人口(自費出版を趣味あるいは発表の場として利用する人の数)が増えていくのか、あるいはそれほどでもないのかという点に関しては、今後の日本の社会・文化構造の変化とも関連しているので、現在でも議論があり、以下のような異なる意見になっています。
(以下略)



■部門別の比率 女性の場合は、個人史と文芸部門を合わせて80%を超える 文芸は総合でも40%、ついで個人史が28%

自費出版文化賞は、応募作品を5つに分類しています。全体の結果は、(1)地域文化部門が12.6%、(2)個人史部門が27.9%、(3)文芸部門部門が38.9%、(4)研究評論部門が11.7%、(5)グラフィック部門が8.9%になりました。
個人史と文芸部門を合わせて67%になります。男女別に分けるともっと極端です。女性の場合は、個人史と文芸部門を合わせて80%を超えるからです。逆に研究・評論分野は男性の3分の1しかありません(表4-2)。
自費出版文化賞での、この応募分野別の傾向は、年度ごとの変動がほとんどないことなどから、実際の自費出版の分野や割合を反映したものとも考えられます。男女別の割合の差も現実の自費出版の傾向ではないでしょうか。これは男女の知的関心方向のあり方を考える意味でも興味深い事実です。
(以下略)


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「へき地の障がい者」の問題 (1)

妙なタイトルをつけてしまいましたが、基本的には「文字」の問題ですが、もう少し深い問題に発展するテーマだと思います。最初に次の文章をお読みください。


野呂昭彦知事は24日再開した県議会2月定例会本会議で、へき地の医師不足解消のため、三重大学医学部の入学定員増や、県内在住者を対象にした地域枠を入試に設けることを国に要望していることを明らかにした。(略)また、野呂知事は、(略)ガス化溶融施設(四日市市小山町)の多額の赤字が債務超過の要因になっていることにふれ、「県としても一般廃棄物焼却残さの広域処理について、(同施設建設の)施策を積極的に進めてきたこと、最大の出えん者であることなど、責任を真しに受け止めていく必要がある」と述べた。[田中功一]


「この中に出てくる文字を漢字にせよ」いう国語の問題ではなく、少し古いですが、毎日新聞に掲載された実際の記事です。多分、漢字制限で、常用漢字表にない文字は使用しないというルールに従っているのだと思いますが、あまりに機械的という気がしませす。「出えん者」とは何のこと? 「残さ」とは残差? まるでクイズのようです。正解は(1)僻地(2)残渣(3)出捐者(4)真摯となりますが、漢字が分からなければ辞書を引くこともできませんし、逆に「出えん者」や「残さ」が分かる人は当然漢字が分かります。なぜなら「残渣」という言葉があって、「ざんさ」という読みができるのですから、どう考えても、これはかえって不都合です。


ただし、最初の「へき地」は、少し意味が違うのではないでしょうか。「僻」が常用漢字にないといことはあるのでしょうが、「僻」という文字自体の意味やニュアンスが嫌われていると考えたほうがよいのではと思えるからです。この件は、私が最近気がついたでけで多分かなり以前から(多分、行政のなかで)使われていたのではないかと思えます。ただ、「僻地」を使用する記事やウエブサイトも多く、やや混乱しています。それにしても「へき地」とはおかしな言い方もあるものです。まるで、「僻地」という言葉があるから地域格差問題が発生するのだとでもいうような感覚が感じられます。


同じようなことですが、もっと分かりやすい問題として、「障害」を「障がい」と言い換える最近の風潮があります。多分、「害というのは「悪いこと」の意味だから、まるで障害=悪だとして障害者を差別するものだからだ」という説明がなされているようです。これに対して「『障がい』という言葉は、事の本質を隠し、表面的なものを小手先でいじっただけの、ただの欺瞞である。使っているほうは差別をなくしたいという思いでやっているのかもしれないが、偽善としか言いようがない」という意見があります。

→ ■[障害」は「障碍」(「障礙」)と表記すべきである 熊田政信氏の随筆]
作家・筒井康孝氏の断筆宣言で「言葉狩り」ということが話題になりましたが、あのときもきっかけは「癲癇」の記述が差別的であるとして、「日本てんかん協会」から抗議を受けたことに由来します。ここにも漢字の問題がからみますが、、筒井氏のような表現活動・言論の自由と「障害→障がい・書き換え問題」は微妙に違います。私は、上記・熊田氏のいうように、ここに偽善や言葉だけで自体を隠そうとするいやしい品性を感じるからです。(この問題は大きいで、続きます)


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